【保護犬の医療費のリアル】中型犬の皮下肥満細胞腫、手術しない場合の予後と安楽死

お金・投資

中型犬の生涯にかかる費用総額は350万円以上って本当か?大型犬・中型犬と小型犬のコストの差はどこにあるんだろう?と思っていたところ、医療費が大きなポイントであることが分かりました。

我が家の犬が病気にかかったことがきっかけで、記録も兼ねて「腹部にできものがあることに気付いてからの流れ」と「費用」を記録します。

雑種、17kgの中型、オス。

あくまでも「我が家の場合」だけど、どなたかの役に立てば幸いです。

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犬の医療費に違いが出る理由、皮下肥満細胞腫の確定診断

我が家に来た犬は当時推定5歳の雑種、オス17kg。

医療費は、初診料や再診料といったものは誰でも同一金額ですが、薬はその子の体重に応じて必要量が変わります。
例えば体重17kgのうちの犬の場合は、2kgのチワワ8.5頭分の薬代がかかることになります。
また、どんな薬でも、人間用の医薬品を流用できれば安価で済みますが、動物用医薬品を使う場合は高価になるといえます。

かつ、高額の費用をかけてでも積極的に高度な治療を受けさせるのか、それとも自然に任せて寿命を全うさせるのかによっても変わります。

8歳で肥満細胞腫と診断された時の流れ

2月下旬 胸の剣状突起のところにしこり(山みたいな出っ張り)がある気がしました。年末まではこんなのなかったような。剣状突起にしては出っ張りすぎのような。
3月初旬、動物病院の腫瘍認定医を受診。ちょっと見ただけで、悪性腫瘍だろうと言われました。
当日、血液検査で肥満細胞腫の確定診断を受け、突然死を予防するための薬を処方されました。

レントゲン、エコー、c-kit遺伝子変異検査等で
費用58,000円。

3月上旬、全身麻酔でCTと生検を受けました。 費用70,600円。

3月中旬に検査結果が出ました。
悪性度のグレードはlow(グレード1)でした。
ただし胸骨や肋骨を温存しての腫瘍切除は不可であり、かつ、体が大きいため胸骨や肋骨をインプラントで代替することは強度の面から難しいとのこと。
また、強度の分離不安や問題行動があることから、半日の入院にも耐えられない=手術を強行することもできないと言われました。通常は術後管理で2週間ほど入院が必要なんだけど、CTを受けた日の半日入院ですら大暴れして歯を折って帰ってきたので、2週間なんてストレスが大きすぎて無理でしょうと。

全開
全開

つまり、手術ができない以上、根治は望めない。

グレードlowの判定なのに悔しい…

ここまでの診断と犬の性格から、手術以外の方法として、放射線治療をするか、抗がん剤投与をするか、あるいはどちらもやらないか、いずれかを選択することとなりました。
なお、この時点で腫瘍は握りこぶしほどの大きさになっています。

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手術以外の治療の選択肢

それぞれの方法について、獣医師から伝えられた内容は次の通り。

・放射線治療…週2〜3回、車で片道2時間の大学病院に通い、全身麻酔での治療を受ける。
腫瘍だけでなく正常な細胞もダメージを受ける。また、麻酔による負荷もある。
・抗がん剤…2日に1回の投薬で、月3万円前後の費用がかかる。
一時的に腫瘍がかなり小さくなることがあるが、2〜3ヶ月ほどで効かなくなるうえ、肝臓などに影響が出る場合がある。動物用医薬品なので高い。
・どちらもやらない…ステロイドを投与することで腫瘍が小さくなることがあるが、効果は1ヶ月ほどしか持たない。費用は月5千円ほど。人薬を使えるので安い。

理想は放射線治療だが、どの方法を選んたとしても、家族が真剣に考えたうえでの答えならば犬は文句を言わないだろうとのことでした。
再診料と突然死を防ぐ薬の処方で費用 13,300円。

3月末。
結論としては放射線も抗がん剤もやらないことを選びました。
もし自分が当事者(犬)だったらどうしたいかと考えてのことです。

もうすぐ9歳の本犬がもし人間だったら、50代後半くらいです。
放射線治療や抗がん剤で元気な期間が数ヶ月(犬の時間の流れに換算すると2年くらい?)延びるとしたらどうだろう…

自分が悪性腫瘍を患って「治療を受けたら60歳まで生きられますよ」と言われたとしても、その2年にさほど大きな価値を見出さないのではないかな。
前提として、毎日全開で思い切り今を生きているから、アラフォーの現時点ですぐに死んでも後悔はない、というのがあります。
それに、頻回の通院によって、家族に金銭的にも時間的にも大きな負担を強いてしまいます。実際、放射線治療は週2~3回、片道2時間の通院が必要で、これは共働きの私たちにとっては現実的な選択肢ではありません。

9歳で命が尽きたとしたら、もちろん悲しいし、してあげられたかもしれないことを十分にできなかった申し訳なさは残るでしょう。
けれど、それも込みで、それが彼の寿命だったのだと受け入れることにしました。
できることなら代わってやりたい、何でもしてあげたいという思いはあるけれど、感情と現実は切り離すことに。

その日から、ステロイドのプレドニゾロンの投与を受けました。

2週間後に腫瘍の大きさの変化を観察し、血液検査で肝臓や腎臓に負荷がかかりすぎていないか確認することになりました。
費用 18,000円。

動物病院から帰宅してすぐ、犬が室内で留守番できるように玄関内を調えました。
犬小屋を玄関内に移設したり、合板で壁を養生したり。
これまで留守番トレーニングを何度も断念してきたけれど、今回またチャレンジです。

鉄格子の頑丈な檻すらも、歯を何本も折ったうえ体も血だらけにしてまで脱出してしまう犬。分離不安からくる破壊行動が強烈です。

金属製のケージに入れるのではなく、合板で玄関内を養生することにしました。歯や爪などを引っ掛ける余地のないすべすべの合板で玄関内を覆ってしまえば、少しでも彼の身を守れるかも、と考えました。(ついでに内装も守りたいし)

子どもの春休み中、初めての室内トイレ成功。
しかしやはり破壊行動は止まず、ペット用トイレをいくつも壊してしまいました。
ほんの15分の留守番もできません。
2階に家族がいればまだマシだけど、完全に1人にされると破壊行動と吠えが止まらなくなります。コングなどの噛むおもちゃを与えても、そちらには興味を示しませんでした。
でも今回は留守番トレーニングを諦めるわけにはいかないから、改めてじっくりやろうと夫と話し合いました。
費用 ペット用トイレ3つ6,000円、おもちゃ・おやつ2,500円。

2週間経って4月になり、また受診。

腫瘍は見るからに小さくなっています。

けれど、肝臓の数値が上昇していて、今度は肝臓を保護する薬を追加されました。

費用 27,500円。 

次は4週後に来てくださいとのこと。

そこから1週間ほどで腫瘍の縮小が止まった気がします。

食欲は明らかに増しています。←ステロイドの副作用ですね。

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腫瘍の縮小が止まってから

ステロイドと肝臓の薬を処方されて4週後、また病院へ。

ステロイド服用開始から1ヶ月あたりで、腫瘍の縮小はストップしたように感じます。

「ステロイドは1ヶ月ほどで効かなくなる」というのは、あらかじめ獣医師から聞かされていた通りでした。

全開
全開

肥満細胞腫の切除術ができないと分かった時、今後の治療の選択肢として複数の方法を獣医師から提示された際に、ステロイドの効果は1ヶ月ほどしか持続しないと言われていました

肥満細胞腫のサイズを計測するとほぼ変わらず。と言っても、大きさは日々変化するので、あくまでも「その時のサイズ」を計測したに過ぎないのだけど。実際、もっと大きい日もありました。

血液検査の結果、ステロイドの副作用は許容範囲内でした。

ステロイド&肝臓の薬を続けたうえで、別の抗がん剤(イマチニブ)を追加する方法を提示されました。

ステロイド&肝臓の薬だけでは、いずれ腫瘍がまた大きくなると予想されるので、抗がん剤を試すのもよい方法であるとのこと。ただし効果がある可能性は、うちの犬の場合は3割程度のようです。

私はもう以前から覚悟が決まっていたので、今回は抗がん剤は追加せずに、ステロイド&肝臓の薬を継続することを選択しました。

再診、血液検査と処方で費用31,000円。

この時、次回の診察時に腫瘍が大きくなっていることを前提に、抗がん剤を試すか否かを考えておくようにと再度言われました。

夫とは当初から抗がん剤はやらないと決めているものの、改めて獣医師から検討するように言われると悩むというか、当初の決断を否定されるようで辛いものがありました。

でも元気でいられる期間が3ヶ月延びる可能性は3割…やっぱり自分が本犬だったら、いらないなぁ。犬にとっての3ヶ月は人間換算で1年半くらいですよね。自分なら、薬代に10万円かけてこの可能性を試すのは、体力的にも経済的にも家族に負担がかかるから嫌だなぁ…

それから4週後の診察までの間に、獣医師が予測していた通り腫瘍はだんだん大きくなっていきました。小さくなったり大きくなったり、一進一退を繰り返しながらも、やはり大きくなるパワーの方が強いです。

かつ、散歩の後の疲労が続くのと、常に倦怠感があるのとで、横になっている時間が増えました。

↑胸に腫瘍があることがわかります。

↑5月末頃。腫瘍は少しずつ大きくなり、ステロイドへの耐性がついていることを感じました。

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限られた「普通の生活」ができる時間

そして6月上旬、再診。

積極的な治療は行わないことを改めて獣医師に伝えたところ「分かりました、その方針は間違いではないのでブレないことが大事です」と受け入れてもらえました。

獣医師と飼い主とでしかり話し合って、家族にとってベストな方法を決めたことだから、それは正解ですよと言ってもらえました。

前回と同じステロイドと肝臓保護の薬、そして自壊に備えて患部に塗る粉薬を処方され、費用 37,500円。

↑帰宅後、腫瘍への刺激を軽減すべく、綿入の座布団を古い敷パッドでくるんだ即席ベッドを用意したり…

犬小屋にも、ふかふかの毛布を追加したりして。腫瘍への刺激は突然死の原因になる他、自壊しやすくもなるから、ちょっとでも今の生活レベルを維持するのが目的です。

↑7月に入り、腫瘍はまた大きくなっていきました。7月の受診までに自壊するんじゃないかと思っていたけれど、どうにか耐えています。

↑でも皮膚はかなり薄くなっていて、自壊は近いのかも…

7月中旬の診察時には、内ももや耳の後ろにも腫瘍ができていました。検査をしたところ、内もものは肥満細胞腫だろうけど、耳の後ろのはまた違う腫瘍のよう。

ただ、耳の後ろの腫瘍をこれから改めて詳しく検査して積極的な治療を行うことは現実的ではないといったことを獣医師と話し合って、今後もこれまでと同じ治療でやっていきましょうということになりました。

胸の肥満細胞腫がメインの病巣で、すでに余命はそんなに長くないかもしれないんだから。

今回は2箇所の検査をしたので、費用は高めの4万1千円。

8月上旬になると、首回りや四肢、臀部などに腫瘍が多発。もう薬が効かなくなっているんだろうな。

本犬もおなかが重そうにしています。

普通の生活ができる時間はもう長くなさそうです。

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ついに自壊が始まった

異変に気付いてから約6ヶ月、3月初めの診断から5ヶ月半で、とうとう自壊が始まりました。

8月中旬、おなかの腫瘍に触れると、手が湿る感じがあり、他のところにできた腫瘍も舐めたり掻いたりして出血し始めました。

予定を1週間前倒しして動物病院に連れて行くと、「包帯や衣服はかえって摩擦が増えるので、外傷用の粉薬をこのまま使ってください」と言われました。

で、身体じゅうに多発している腫瘍は検査をすることもなく、ステロイドと肝臓保護の飲み薬をこれまでと同量処方されて終了。

いつもは会計の時に「次は〇月〇日」と次回の予約をしてから帰るんだけど、この日は何も言われませんでした。

もう最後が近付いているんだな…と実感。

低反発マットレスで腫瘍にかかる体重を分散させるべく、近くのニトリでちょうどよさそうなものを買って、防水シーツを巻きました。その後は出血がおさまりました。

医療費35,600円、マットレス3,000円。

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立てなくなる&呼吸が荒くなる&出血が増える

受診の翌日から食欲がなくなり、立ち上がろうにも踏ん張りがきかなくなり、ずっとハアハアしているのが3日ほど続きました。

もうこのまま死んでしまうかもと覚悟しました。火葬のこととか調べましたよ。

が、1日3錠のステロイドを一度だけ4錠にしたら、スムーズに立って、散歩中はぐいぐい引っ張り、小走りをするじゃないの。(ステロイドの使用量はもともと最大ではなく、最終末期には倍増させてもよいと言われていました)

久々にリードを引っ張られて嬉しいような、なんだか複雑な気分。

薬がだんだん効かなくなっていたけど、それでもちゃんと効いてたんだね。薬の効き目よりも病気の悪化のパワーの方が強くなってきているんだね。

それからはおやつと一緒に薬を与えることで、食欲と体力をどうにか保ち、1週間、2週間…と経過しました。

排泄は普通にできるものの、散歩はかなりゆっくりとした歩みになっています。

出血は、自壊が始まってから日に日に増えます。量も、箇所も。多発している腫瘍があちこち破れていきます。それでも鳴くことはありません。痛々しい姿だけど、本犬はいつも通りに過ごしていました。

10メートルのガーゼとテープを週に2回も3回も買いました。

全開
全開

一進一退、一喜一憂…そんな日々のなか、それでもやはり寝ている時間が増え、立ち上がる時にも踏ん張れずに足が滑り、歩行もよりスローになっていきました…

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ほぼ寝たきりになり、安楽死を検討

8月中旬の受診から3週間ほどで、寝てばかりに。

リードを見せるとどうにか立ち上がって散歩に行きたがるし、トイレに行きたい時も意思表示してくれるけれど、食べる量は激減して痩せました。首輪もゆるくなっちゃった。

留守番中もほぼ寝たきりのよう。褥瘡(床ずれ)もできてしまいました。

分離不安による破壊行動が強烈すぎて、これまで4年間で一度も室内での留守番はできなかった(ほんの10分でも家具を破壊してダメだった)けど、大暴れするパワーがなくなったせいで室内にいられるようになりました。。。複雑。

9月になり、安楽死を改めて考えます。

食べる、排泄する、寝る、散歩する…そんな当たり前のことができなくなったら。

あるいは、強い臭いや介護によって家族に負担がかかりすぎるなら、安楽死も選択肢としてある、とあらかじめ獣医師から伝えられていたこともあるし、夫とも以前から話し合っていたから、自然な流れです。

全開
全開

アメリカとかだと、治療しても完全には治らないと分かった時点で「では安楽死を」と決める飼い主も結構多いです

我が家の場合は、最後の最後まで尽くして介護を頑張ることがベストだとは考えていません。

犬の生活の質(QOL)をできるだけ最後まで維持したうえで看取りたい思いもあるけれど、家族にも生活があり、家族の生活の質だって重要です。

本犬が普通の毎日を送れず、生活を楽しめなくなったら安楽死を、ということにしていました。←夫とも完全に意見が一致しています。

9月に入る少し前の時点で、腫瘍が破れて内容液が大量に漏れ出し、部屋じゅうに悪臭が漂う中、掃除とガーゼ交換、消毒、換気をせっせと行ったり、仕事の後にガーゼなどを買いに行ったり、寝る時は夫が犬に付き添って一緒に寝たりと、家族の負担はすでにそこそこ大きくなっていました。

自壊した部分の衛生用品や消臭剤などの費用 8,500円。

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9月末の決断

「2~3日様子をみて、本犬が生活を楽しめず、生きようとする意欲が低下しているのが改善されなければ、安楽死の処置を予約しよう」と夫と話すと、その数時間後になぜか活力を取り戻す犬氏…

というのを何度か繰り返して、9月下旬になりました。獣医師の見立てでは「夏は越えられないでしょう」とのことだったけれど、まだ生きてる(・ω・)

でもやっぱり、私たち家族は血液と体液が混ざった浸出液が部屋のあちこちに落ちているのを拭いて回る生活を続けながら、本犬が散歩を楽しめなくなってきて、食欲も落ち、横になってばかりで、ぼんやりとした目つきで過ごしているので、QOLがかなり低下していることを感じていました。

獣医師に面会に行き、安楽死の予約をしました。

肥満細胞腫が低悪性度であっても、手術ができず、ステロイドのみの投薬で生活したうちの犬の場合は、確定診断からの余命は約半年(初診から7ヶ月)でした。犬の半年を人間の尺度にすると3年くらいでしょうか。

最後の医療費は56,000円。全身麻酔と安楽死の処置の費用です。

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中型犬の肥満細胞腫にかかった治療費まとめ

我が家の場合、介護用のベッドなど特別な用具を購入することはほぼなかったので、肥満細胞腫の診断から安楽死までにかかった費用は408,500円でした。あとは火葬とお花代などで15,000円ほど。

手術なし、放射線治療も抗がん剤もなし、ステロイド単独投与の場合の金額です。

低悪性度でも手術ができない場合、たった7ヶ月で亡くなってしまうんですね。とても悔しいです。

5歳でうちに来てくれた保護犬…一緒に過ごせたのは4年間だけだったけれど、本当に愛しくて毎日が充実しました。ただただ感謝しています。ありがとう。

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